3つのカンファレンス、3つの結論 | PART1
ISSUE 21|日本のインパクト・カンファレンスからの学び
今回のNewsletterは、社会人インターンのスカーレット・ギルビーさんが執筆した記事を3部構成でお届けします。来日間もない彼女が学生インターンの篠部愛理さんと倉島有彩さんとともに、日本のインパクト投資や社会起業の現場をどのように感じ取ったのか―。フレッシュな視点と正直な驚きに満ちたリポートを、どうぞお楽しみください。
🇯🇵 日本のインパクト・カンファレンス:外国人インターンの視点から
私が初めて参加したカンファレンスは京都でのものでした。全編日本語で行われ、2日間にわたり、しかも私にとってはまったく未知の分野。日本に到着してからわずか3日しか経っておらず、「Investor」と書かれたバッジを首から下げながら、そんな専門的な場に足を踏み入れるのは、場違いもいいところだと感じていました。会場に入るとき、自分がどんな目で見られるかを気になり、落ち着きませんでした。会場で唯一の外国人 として注目されるのではないか―そんな予感が頭をよぎりました。
「この場に私がいることを、周囲はどう思っているのだろう?」
「ただの迷子の外国人?」
「国際的な来場者を演出するための“フォトチャンス”?」
「それとも、投資家を名乗るには場違いな、経験不足の若者?」
・・・そう考えながら周囲を見回した瞬間、意外なことに気づきました。
誰も私を奇異な目で見ていないのです。
向けられたのは、温かい笑顔と、親しみのある挨拶ばかりでした。
たしかに私は目立っていたかもしれません。
けれどそれは、悪い意味ではなく、むしろ会話のきっかけになっていました。
どこから来たの?―そんな質問が自然に交わされ、言葉の壁を越えて交流が生まれたのです。通訳をしてくれたインターン仲間の篠部愛理さんも、同じように嬉しそうでした。
「怖い場所」ではなく、「ワクワクする場所」に感じられたのです。
SIIFICでのインターン期間中、私は日本の進化しつつあるインパクト・エコシステムを映し出す3つのカンファレンスに参加しました。それぞれの場は、日本社会が社会変革をどのように捉えているかを、異なる角度から見せてくれました。ネットワーキングの仕組み、学びの場としてのあり方、そして政府による後押し。これらを通して見えてきたのは、「日本独自の社会的インパクト創出の道筋」とは何か、という問いでした。
まったくの初心者として臨んだ私にとって、この京都での「BEYOND2025」は、まさに“いきなり深海に放り込まれた”ような体験でした。BEYOND2025は株式会社talikiが京都市、京都リサーチパーク株式会社と共に実行委員会を構成・開催する日本最大級のソーシャルカンファレンスです。通訳兼インターン仲間の篠部愛理さんとともに、スポンサー、登壇者、参加者と積極的に会話を重ね、日本のインパクト・エコシステムの現場感を肌で吸収していきました。
続いて参加したのは、ソーシャス株式会社が虎ノ門ヒルズフォーラムで主催した「Tech for Impact Summit」。国際的な来場者層や英語でのプログラム構成など、私にとってはより馴染みやすい環境でした。しかし意外なことに、共通言語を持っているにもかかわらず、実りあるネットワーキングは驚くほど難しく感じられました。規模の大きさとフォーマルさが、京都のような温かい一体感を生み出すことを妨げていたのかもしれません。
そして最後は一般社団法人インパクトスタートアップ協会が主催するカンファレンス「IMPACT STARTUP SUMMIT 2025」。そこでは、再び日本語中心の環境に戻り、通訳兼インターンの倉島有彩さんと参加しました。著名な登壇者たち―お笑い芸人、元首相、そして新たに就任した高市早苗首相―の話を直接聞く貴重な機会に恵まれました。ただし、盛りだくさんのプログラム構成のため、期待していたような深い交流を持つ時間はほとんどありませんでした。
これら3つのカンファレンスが特に示唆的なのは、それぞれが日本社会の「社会変革の進め方」を異なる形で映し出していることです。一つひとつのイベントを個別に見つめ、その洞察を統合してみると、日本社会がインパクトをどのように受け止め、どんな独自の道を歩もうとしているのかが見えてきます。
それこそが、まさに「日本らしい変革の形」なのです。
🏯 「BEYOND2025 -再分配のはじまり-」2025年10月3日・4日@京都


私の最初のカンファレンス体験―それは、まるで「深い海に放り込まれた」ようなものでした。会場は京都リサーチパーク。2日間、全編日本語で行われる「BEYOND2025」というイベントです。同じくSIIFICのインターンで通訳を担当してくれた篠部さんとともに、スポンサーや登壇者、来場者との会話を通じて、日本のインパクト・エコシステムを「現場」から学びました。
BEYOND2025は単なるカンファレンスではありませんでした。日本の経済の現状に疑問を投げかけるだけでなく、「トリクルダウン型モデルへの決別」を高らかに宣言するものでした。
テーマは「再分配のはじまり」。
それは、単なる改革ではなく、既存の構造を変える「意志をもって届ける」―つまり、資本・知識・技術・人の力を、本当に必要とする場所へ再配分するという挑戦でした。目指すのは、「連帯に基づいた新しい社会の基盤づくり」。起業家、投資家、企業、行政、NPO、そして市民が垣根を超えて連携する、壮大なビジョンです。
会場が京都リサーチパークであったのも象徴的でした。日本初の民間運営によるビジネスパークであり、「産学官連携の拠点」として知られています。会場の入り口をくぐると、目に飛び込んできたのはカラフルなネームストラップの波。黄色は投資家、黒は学生。色によって役割と立場が可視化され、それが同時に「この場で何を担えるか」という期待を示していました。
驚いたのは、最初の講演が始まる前に、運営者が参加者同士で自己紹介をするよう促したことです。日本社会特有の上下関係や形式ばった名刺交換とは対照的に、ここでは見知らぬ人とすぐに言葉を交わせる―そんな「水平な関係性」が意図的に作られていました。
その「包摂性」の精神は展示ホール全体にも息づいていました。
自殺防止、犯罪者の社会復帰、英語教育などに取り組むNPOが並び、すぐ隣には営利企業のブースがありました。まるで「日本社会の痛点」が一堂に可視化されたかのようでした。中でも私にとって印象的だったのは3社です。
🍃 TERA Energy株式会社:2018年に京都のお坊さん4人によって起業された再生可能エネルギー企業。つながりを大切にする新たな社会づくりに挑戦しており、太陽光・風力・水力・バイオマス発電を提供するだけでなく、顧客が支払う電気料金の2.5%を自動的に選択した慈善団体・地域団体に寄付する仕組みを持っています。仏道に生きた近江商人の〈 三方よし~売り手よし、買い手よし、世間よし 〉に〈 未来よし 〉を加えた〈 四方よし 〉の精神を大切にています。このモデルは「売り手・買い手・社会・未来の四方よし」という日本の伝統的価値観をビジネスとして具現化しています。
👶 株式会社あすいく:2017年設立。「社会全体を子どもの学びの遊び場にする」というミッションのもと、日本の深刻な保育課題に取り組む企業です。お子さまをちょっと預けたいとき、スマホ&LINEから安全・安心な預かり先を検索・予約できるサービスです。LINEを活用したオンデマンド保育マッチングサービスを運営し、鉄道会社や商業施設と連携して体験型教育プログラムを展開しています。社会課題を日本の強みであるインフラと結びつけるアプローチが印象的でした。
♻️ 株式会社GAB:2019年創業の東京発スタートアップ。廃棄物を新たな素材に生まれ変わらせ、エシカルな小売を展開し、ゲーム的要素で環境行動を楽しく身近にする。「サステナビリティは我慢ではなく、日常の一部である」というメッセージを体現していました。
これら3社に共通していたのは、「サステナビリティ」「地域再生」「子育て支援」といった、社会的ニーズと市場の空白が交差する分野への集中でした。特に「リバース・ピッチ」(投資家が自らの投資テーマを起業家に提案する形式)のセッションでは、この傾向がより鮮明でした。医療系スタートアップが少なかったのに対し、環境・育児関連の企業が圧倒的に多かったのです。
たしかに、カンファレンス全体は日本語で進行し、私は翻訳アプリと篠部さんのサポートに頼りきりでした。それでも本当に重要だったのは「言語」ではなく、「雰囲気」でした。
形式張ったプレゼンよりも、ブースで交わす対話こそが価値を生んでいたのです。
会場を歩けば、名札の色など関係なく、誰とでも自然に会話が始まる。この「親密で温かい空気感」こそが、私がその後に訪れるどのカンファレンスをも評価する際の“基準”になりました。
次の目的地―東京・虎ノ門ヒルズへ向かうとき、私はすでにその違いを予感していたのです。
おわりに
いかがでしたか?
日本のインパクト・カンファレンスの“入り口”として、スカーレットの京都での体験をお楽しみいただけたでしょうか。
明日配信のPart 2では、東京・虎ノ門ヒルズで開催されたTech for Impact Summitの様子をお届けします。
BEYOND2025の温かい交流とは対照的な、首都・東京のカンファレンスシーンを、どうぞお楽しみに。

